福島原発賠償費、電気代での負担額は 1世帯あたり試算
西村圭史
2017年2月27日00時30分
東京電力福島第一原発事故の損害賠償費用は、原発を持つ東電以外の電力会社も一部を負担している。家庭の電気料金でまかなっている7社について、朝日新聞が取材を元に国の家計調査を当てはめて試算したところ、1世帯(2人以上)あたり年約587~1484円を負担している概算となった。家庭の負担額は料金内訳が書かれた検針票には示されておらず、利用者の目には届かない。
関電と中部電が取材に対し、家庭向けの1キロワット時の概算を出していることを明らかにした。この方法を元に朝日新聞が他社分も試算。全社がこの試算の考え方に誤りがないことを認めている。
http://www.asahicom.jp/images/asahicom/hand.pngこれに各家庭の使用電力量をかければ負担額がわかる。国の家計調査を元に1世帯(2人以上)あたりを計算すると、最高は四電の1484円だった。次いで関電が1212円、東電が1159円、九電が1127円、北電が1034円、東北電が774円、中部電が587円となった。
電気料金は、電気をつくって届けるのに必要な費用をすべて回収できる仕組み(総括原価方式)になっている。7社が2012~14年度に値上げした際、一般負担金を料金算定に使う「原価」に盛り込んだ。このため家庭の電気料金に直接転嫁されることになった。
政府は20年から送電線の利用料にも2・4兆円分の賠償費用を上乗せする方針だ。国の試算では、賠償費用を含め、廃炉や除染などといった事故対応費用は21・5兆円にのぼる。東電が負担する費用以外に、税金も投じられる見通し。(西村圭史)
■一人一人の負担が見える形に
〈全国消費者団体連絡会の河野康子事務局長の話〉 福島第一原発事故後の混乱の中で深い議論がないまま制度ができて、本来は東電が負担するべき賠償費用について多くの消費者が自覚のないまま一般の電気料金から回収されている。一方で、福島の事故で困っている人がいるのも事実。消費者が原発事故の問題に向き合うためにも、国や電力会社はもっと一人一人の負担が見える形にするべきだ。
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