長門銭広永様は難しい銭

もう当たり前だが、自民党は国民を幸せなど全く気にしていない。

三一新書というのが昔あってね。

私の育った国府(こう)の町の郵便局が移転した後、潮書房(うしおしょぼう)という本屋さんになって、そこで、高校生の頃、「人知れず微笑まん」を買った。小さな本屋さんでしたが、三一新書が1mぐらい並んでいて、その中にあったのだな。もう今はそんな町の本屋さんはないだろう。デッドストックで並んでいたら、私はその1mを全部買ってしまうだろう。

「コイン利殖入門」という怪しい題名の、多分カッパブックスだったと思うけれど、著者の軽々しい(すみません)写真も載っていた。掘り出し物を探してひと儲けしようという、意図の本だ。その本で「島屋文」を覚えた。

豊橋には、東田電停の近くだったか、名前は忘れたけれど、古本屋さんがあって、そこで戦前の「講談社の絵本」が2000円ぐらいで売られていたのだけど、少し経ってからすっかりなくなっていたので、店のおばあさんに聞いたら、「東京の業者が全部買って行った」と情けなさそうに答えてくれた。

まだ、古本にも、地方売価というのがあったのだな。尤も、東京で刷って、地方に運ぶと運送料がかかるから、地方の方が高かったのだと記憶している。古本はその逆で、地方の方が安かった。だから、東京の古本屋の目利きは、地方を回っては、「せどり」するのだ。

せどり男爵数奇譚」なんていう、これまたふざけた本もあって、読み物としては面白いのだが実際はそんな人がいそうな感じはしなかった。紀田順一郎という書物についての評論家が見えて、その方が紹介された本の中に、「フランス短篇集1」というのがあって、私はちょうど、岡崎の桃山書房で500円ぐらいで買ったのだ。アンドレ・モーロワの幽霊屋敷だったかなあ、紹介されていた。なんと、検索してもヒットしない本になってしまった。

安城の中村書店だったか、(全国古本屋地図」で調べるのだが、1983年版には載っていない)『青年芸術派』新作短篇集という文学同人誌が棚に並んでいて、それは私がせどりした。といっても価値は知らず、ほしかっただけだった。1000円だったかなあ。十数年前、「5万円と戦前の田宮虎彦の希少本のコピーとで譲ってほしい」という依頼があったのだけれど、応じなかった。今は27500円で東京の神田の古本屋が売っている。一向に売れないので、もう時期は過ぎたのだな。

むかし、むかしの おはなしよ。