長門銭広永様は難しい銭

もう当たり前だが、自民党は国民を幸せなど全く気にしていない。

昔の映画の話

昔見た記憶のある映画が演劇になって、町の劇場でかかっていたので、観に行った。

小さな劇場で、そこら辺りが朽ちていて、なんだか心配なほどの佇まい。登場した役者は、男優と女優一人ずつ。有名な映画の場面で、展開はわかっているので、落ち着いて観ていられるのだな。女優の方は、気品があってよいのだけれど、まだ演技に今一つ不安のある所を、男優が小さな声でサポートしながら、練習しているような芝居。それがとにかく気高いのだ。観ている私は「これは昔見た現代舞踏風に演出されたカルメンの二人か、それとも椿姫の二人かなあ?」と思いながら、とにかくこの不思議な雰囲気の演劇は夢なのだから、それを指先の演技まで細かく再現している私は、自分が監督のように思えて、とても誇らしい気分になった。温度差のある女は、男から「好きだよ」と言われたくて「好きだよ」って言ってと男にねだる。男はめんどくさそうに女に応えると、女は安心して息絶えてしまうのだが、男はそんな切迫した状態に女があることに気が付かなかったので、息絶えてしまった女を悔やんで男も命を絶ってしまう。数秒後、芝居の練習が終わって、男が「こんな劇のハイライトを数編演じるんだよ」というと女は「自信がない」と言いながら涙を流す。「大丈夫だよ。今の演技はとても良かった。本当に自信のないのはよく分かっているけれど、それでいいんだよ」と男優が女優に告げる。男優も女優も私である。そして観ている観客も私である。
こんな夢なら毎日観たいが、一度きりであることも分かっている。二回目は初めてと同じように感動できるだろうか。ゆめてふものを頼みそめてき、という感じだなあ。私はもう一度観たくて「まだ夜明けまでには時間がある」と布団に潜り込んだ。