結局、金曜日にじいさんの所へは行けず、土曜になりました。
じいさんは、のんびりしているように見えましたが、私が訪れるのを待っていました。
みると、倉庫部屋は、きれいに片付いて、傍らに、ほうきとちり取りがありました。
「なかなか来んで、自分でやっといたよ」
「ほれ、これでいいのか」
じいさんが一冊の本を差し出しました。
「昭和40年から載っとるぞ」
「40年から43年まで、4年間描ける」
「なんだ、たったの4年か」
「4年でもありがたい。これで50年のグラフが描けます。いやあ、よかったあ~」
「何だか知らんが、そんな上手い話、あるんかあ」
自分が株をしていること、それには、グラフが必需品で、出来るだけ長い期間のグラフがいいことなど、話してありました。
片付けたら少しはきれいに見えるかと思いましたが、昼間の倉庫は、夜見るより汚く見えました。
「あ、甘栗持って来たよ」
「ありがとよ」
じいさんとテレビを見ながら、麦茶で食べました。
ついに、整理が終わってしまいました。
何を話すでもなく、お昼になったので、私がカツ丼を食べに食堂へ誘いました。
「おら、半分でいいわ」
「あいよ」
じいさん用のかつ丼は、半分ずつ2つのどんぶりに入っていました。
家族のような食堂の主人です。
食べ終わると、
「じゃ、また来るわ」
「お、おお」
食堂で別れました。
また、甘栗を持って行けばいい、そんなことばかり考えながら、家に帰りました。
じいさんには、40年版と34年版があると、都合がいいのだけれど…、などと話はしましたが、果たしてどうなることでしょう。
思いがけなく電話がかかってきて、
「あれ、出たよ」
という運びになるといいのですが…。
そんなに上手く事が運べば、こんな川柳は読まれなかったはずです。
出ましたら退(の)けときますと古本屋
ですから、あの本は、やはり、じいさんのボナンザなのだと思います。